〈天気の良い日はキャッチボールを〉

武蔵野市役所の西側に位置するこの広い中央公園はのどかなスポーツ広場で、
特に梅雨入り前の今時は公園を取り巻く木々の緑がひときわ美しく気持ち良い。
かつてこの地は戦時中、戦闘機のエンジン製造の巨大な軍需工場があったとか。
午後1時の広い芝生の上では、遠くで数人のおじさん達が思い思いの手作りの紙飛行機を
青空に向かって飛ばし合っている。 

山崎さんはママチャリのかごにグローブを入れて、申し合わせた時間に現れるはずだが、
今日はどうしたことか20分過ぎてももまだ来ない。
こちらに向かう道すがら、山崎さんの自転車のタイヤが突然パンクしてしまい、
仕方なく自宅に取って返し、あらためて車で出直して来たという。 
公園の駐車場からグローブを抱えて小走りの山崎さん、
まずはタバコ一服でヤレヤレと息を整えながら苦笑する。
キャッチボールなどは附設のグラウンド内でやらねばならない規則なのだが、
逸脱したボールを拾いに走るのが大変なので、
見回り中の監視員の姿を横目で窺いながら、芝生の上でボールを投げ合っている。

普段使っていない筋肉をほぐすのは体力維持の一環と山崎さんも同じ思いで受け止めているようで、
このキャッチボールはもうかれこれ10年以上も続いている。
 
時には、ボール投げより冗談話の方に多くの時間をかけることも度々で、
それはそれで楽しい午後の一時である。
 
                         令和元年6月某日 橘田幸雄